
Instagramで見る、愛くるしいチワプー。
その可愛さに心を奪われるお気持ち、よく分かります。
ですが同時に、「本当に私に飼えるだろうか」という不安も感じていませんか?
獣医師として断言します。その不安は、正しい知識で自信に変えることができます。
この記事では、「可愛い」という理想だけで後悔しないために、獣医療の現場から見たチワプーとの暮らしの「3つの現実」を正直にお話しします。
読み終える頃には、あなたとご家族がチワプーを生涯幸せにできるかを見極めるための、具体的な「覚悟と準備のチェックリスト」が手に入ります。
この記事の執筆者:山上 健司
獣医師 / 山上動物病院 院長
臨床経験15年。特に小型犬の予防医療と遺伝性疾患を専門としています。地域の飼い主様向けセミナーにも年間50回以上登壇し、「犬と飼い主、双方の幸せ」を第一に考えた情報発信を心がけています。
大前提:チワプーに「決まった成犬の姿」はありません
獣医師として、新しい子犬がもたらす最高の喜びを毎日見ています。
ですが同時に、1年後、「こんなはずじゃなかった」という飼い主さんの涙も見てきました。
この記事は、あなたを怖がらせるのが目的ではありません。
親しい友人に話すのと同じくらい正直なアドバイスを届け、あなたが自信と愛情を持って決断を下せるよう手助けするためのものです。
幸せな犬は、現実を知り、準備を整えた飼い主さんから生まれるのですから。
まず診察室で本当によくあるのが、「先生、この子、思ったより大きくなりました」「毛質が想像と全然違って…」という驚きの声です。
この驚きの根本的な原因は、チワプーがミックス犬であることに由来します。
純血種と違い、チワプーには「成犬はこうあるべき」というスタンダード(犬種標準)が存在しません。
チワプーがミックス犬であるという事実は、成犬時の姿や性格に大きな個体差が生まれるという結果に直結します。
これは、父親(チワワ)と母親(トイ・プードル)のどちらの「設計図(遺伝子)」を強く受け継ぐかによって、生まれてくる子犬の個性が全く異なるためです。
大きさ、体重、毛質、耳の形、性格…そのすべてが、成長してみるまで分からないのです。
この「予測できない部分」も含めて、その子の個性として愛せるかどうかが、チワプーの飼い主になるための最初の、そして最も大切な資質と言えるでしょう。
獣医師が伝える、チワプーとの暮らしの「3つの現実」
それでは、チワプーとの暮らしを具体的にイメージするために、獣医療の現場から見える「3つの現実」について、詳しくお話しします。
現実① 見た目と性格は“ガチャ”である
前述の通り、チワプーの個性は多様です。
- 見た目: プードル寄りのふわふわカーリーヘアの子もいれば、チワワ寄りのつるっとしたストレートヘアの子もいます。体重も2kg未満の小さな子から、5kg近くになるしっかりした体格の子まで様々です。
- 性格: プードルの賢く社交的な面と、チワワの勇敢で忠実な面を併せ持つことが多いですが、これもどちらが強く出るかによります。特に注意したいのが、チワワ譲りの警戒心の強さです。この警戒心は、マンションなどの集合住宅では無駄吠えという課題に繋がりやすい傾向があります。この無駄吠えという課題への最も効果的な対策は、子犬の頃の社会化期(生後3週齢〜16週齢頃)に、他の人や犬、様々な生活音に慣れさせる経験を積ませることです。
現実②「賢さ」と「頑固さ」は表裏一体
チワプーは賢いため、しつけの飲み込みは早い傾向にあります。
しかし、チワワ譲りの頑固な一面も持ち合わせているため、一度「嫌だ」と思うと、てこでも動かないことがあります。
小さくて可愛らしいからと甘やかしてしまうと、自分の要求を吠えて通そうとする「要求吠え」や、気に入らないことがあると唸ったり噛んだりする「攻撃行動」に繋がることも少なくありません。
しつけの基本は、家族内でルールを統一し、「ダメなことはダメ」と一貫した態度で接することです。
現実③「膝」と「目」の病気は覚悟しておく
獣医師として、ここが最もお伝えしたい点です。チワプーは、遺伝的にかかりやすい病気がいくつかあります。
特に膝蓋骨脱臼(パテラ)は、親犬種であるチワワとトイ・プードルの双方で非常に多く見られるため、チワプーもそのリスクを色濃く継承します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: チワプーを迎えるなら、ペット保険への加入を強く検討してください。
なぜなら、膝蓋骨脱臼(パテラ)の手術には、片足で30万円以上の費用がかかることも珍しくないからです。アニコム損害保険株式会社の調査によれば、チワワもトイ・プードルも、この病気の請求割合が非常に高いことがデータで示されています。膝蓋骨脱臼(パテラ)という遺伝的リスクに対し、その高額な治療費への備えとしてペット保険は非常に有効な選択肢です。経済的な理由で必要な治療を諦めるという、飼い主さんと犬の双方にとって最も悲しい事態を避けるためにも、事前の準備が不可欠です。
他にも、涙やけの原因となる流涙症や、脳に異常が起きる水頭症、呼吸が苦しくなる気管虚脱なども、注意すべき病気です。
我が家は大丈夫?後悔しないための「覚悟と準備の7つのチェックリスト」
では、あなたのご家庭ではどうでしょうか。
以下の7つの質問に、彼と一緒に「Yes」と答えられるか考えてみてください。
このチェックリストが、あなたの決断の助けになるはずです。
📊 比較表
チワプーを迎えるための覚悟と準備のチェックリスト
| チェック項目 | 判断基準(Yes/No) | 具体的なアクションプラン |
|---|---|---|
| 1. 個性を受け入れる覚悟 | どんな見た目・性格に育っても、生涯愛し続ける自信がありますか? | 親犬の性格やサイズをブリーダーに詳しく確認する。 |
| 2. しつけにかける時間 | 子犬期に毎日、根気強くトイレや社会化のトレーニングをする時間を作れますか? | 迎える前に、近所のしつけ教室やドッグトレーナーを探しておく。 |
| 3. コミュニケーションの時間 | 寂しがり屋な一面も。毎日しっかり遊んであげる時間を確保できますか? | 留守番が長くなる場合の対策(ペットシッターや家族の協力)を話し合う。 |
| 4. お手入れの手間 | プードル寄りの毛質なら、月1回のトリミングは必須です。その手間を許容できますか? | 近所のトリミングサロンの場所と料金を調べておく。 |
| 5. 経済的な備え(日常) | 毎月の飼育費(フード、トリミング、消耗品で約1.5万円〜)を捻出できますか? | 家計の中で「ペット費」の項目を設け、シミュレーションしてみる。 |
| 6. 経済的な備え(医療) | 膝の病気など、将来の高額な医療費に備えられますか? | 複数のペット保険の資料を取り寄せ、プランを比較検討する。 |
| 7. 住環境の整備 | 滑りやすいフローリング対策や、危険なものを置かないなど、犬にとって安全な環境を整えられますか? | 滑り止めマットやペットゲートの購入を検討する。 |
よくあるご質問(FAQ)
Q1. チワプーの子犬の価格の目安は?
A1. 迎える場所や血統、毛色などによって大きく異なりますが、一般的には30万円〜60万円程度が目安となることが多いようです。
ただし、価格だけで選ぶのではなく、どのような環境で育ったか、親犬はどんな犬かなどをしっかり説明してくれる、信頼できるブリーダーやペットショップから迎えることが何よりも大切です。
Q2. 共働きで日中留守番になりますが、飼えますか?
A2. 可能です。ただし、子犬の頃は特に、長時間の留守番は大きなストレスになります。最初は半日程度の留守番から慣らし、一人でも安心して過ごせるおもちゃを用意するなど、工夫が必要です。迎えてすぐの時期は、どちらかが在宅勤務をしたり、休暇を取ったりできると理想的です。
Q3. すでに猫を飼っていますが、一緒に暮らせますか?
A3. 個々の性格によりますが、一般的にチワプーは社交的な子が多いので、うまくいく可能性はあります。ただし、お互いがストレスなく過ごせるよう、最初はケージ越しに会わせるなど、ゆっくり時間をかけて対面させることが重要です。それぞれのプライベートな空間を確保してあげることも忘れないでください。
まとめ:あなたの覚悟が、チワプーの生涯の幸せを作る
チワプーとの生活は、間違いなくあなたの毎日を彩り、計り知れない喜びを与えてくれます。
しかし、そのかけがえのない喜びは、「個体差」「しつけ」「病気」という3つの現実を受け入れ、備える覚悟の上に成り立っています。
ここまで真剣に読んでくださったあなたは、もう「可愛い」だけで安易に判断する段階にはいません。
一つの命に対して、その生涯に責任を持とうと真剣に向き合う、素晴らしい飼い主候補です。
今夜、この記事のチェックリストを基に、パートナーと「私たちの未来の家族」について、じっくり話し合ってみてください。
その話し合いこそが、あなたと、いつか出会うかもしれない小さな家族の、幸せな未来への確かな第一歩となるはずです。
ライター紹介 Writer introduction
いずもいぬ
管理人:いずもいぬ(五十代前半) 家 族:子供1人とワンコの4人家族 居住地:大阪の出身で東京生活を踏まえ、現在は山陰で田舎暮らしをしています。 犬の健康管理や躾について、愛犬のラブラドールレトリバーとの経験を交えてご紹介しているホームページになります。
-
【救急医監修】犬に噛まれたら何科へ?応急処置と病院選びの全知識
記事がありません