「狼みたいな犬」を飼う前に。法改正の壁と、家庭を守る「賢い選択肢」の話

「狼みたいな犬」を飼う前に。法改正の壁と、家庭を守る「賢い選択肢」の話

[著者情報]

この記事を書いた人:大野 哲也(おおの てつや)
希少犬種アドバイザー / 元・動物取扱責任者
ウルフドッグや大型犬の飼育相談を10年以上受け持ち、数多くの「飼育崩壊予備軍」を救ってきた。「ロマンを追う気持ちは痛いほど分かる同志」として、しかしプロとして「不幸な犬を生まないための厳しい現実」を突きつける兄貴分。

YouTubeで見た、雪原を駆けるウルフドッグの姿。

「かっこいい」という言葉だけでは表現しきれない、あの野性味あふれる瞳に心を奪われてしまったのですね。

「今の自分なら、在宅ワークだし、郊外に庭付きの家もある。彼らを受け入れられる環境があるんじゃないか?」

そんな胸の高鳴りを感じながら、検索窓に「狼みたいな犬」と打ち込んだあなたの気持ち、痛いほどよく分かります。

男なら誰だって、あの孤高の相棒と暮らすロマンに憧れるものです。

しかし、奥様の「危なくないの?」「本当に飼えるの?」という言葉に、あなたは明確な答えを返せましたか?

もし言葉に詰まってしまったのなら、この記事を最後まで読んでください。

プロとして断言しますが、奥様の懸念は核心を突いています。

令和2年の法改正による「飼えない現実」と、それでも狼への憧れを捨てきれないあなたに贈る、家庭崩壊を防ぐための「唯一の現実解」をお伝えします。

【緊急確認】令和2年の法改正で「本物の狼(F1)」は飼えなくなりました

まず、あなたの淡い期待を打ち砕くようで心苦しいのですが、法的なデッドラインについて明確にしておかなければなりません。

かつては日本でも、オオカミの血を濃く引く個体が流通していましたが、令和2年(2020年)6月1日の動物愛護管理法改正により、状況は一変しました。

この改正で、オオカミと犬の交雑種である「ウルフドッグ(F1世代)」は、法律上の「特定動物」に指定されました。

特定動物とは、人の生命や身体に害を加える恐れがある動物のことで、トラやクマと同じカテゴリーです。

そして最も重要な点は、この指定により「愛玩目的での新規飼育」が完全に禁止されたということです。

つまり、あなたがどれだけお金を積んでも、どれだけ広い庭を用意しても、特定動物であるF1世代のウルフドッグをペットとして飼うことは、法律で禁じられた違法行為となります。

「本物の狼に近い犬が欲しい」と安易に探すことは、密輸や違法飼育といった闇のマーケットに関わるリスクすらあるのです。

「F2なら飼える」の落とし穴。日本の住宅街でウルフドッグと暮らすリアル

「じゃあ、規制対象外のF2(F1と犬の子)やF3なら飼えるんじゃないか?」
そう考えたあなた、その思考こそが最大の落とし穴です。

たしかに、F2世代以降は特定動物の指定から外れるため、法的には飼育が可能です。

しかし、合法であることと、日本の一般家庭で飼えることは全くの別問題です。

私はこれまで、「F2なら犬に近いから大丈夫だろう」という甘い認識で飼い始め、家庭崩壊に至ったケースをいくつも見てきました。

ウルフドッグ(ハイブリッドウルフ)と日本の住宅事情がいかに不適合な関係にあるか、具体的な生活崩壊のシナリオをお話ししましょう。

まず、彼らの身体能力はあなたの想像を絶します。

「庭があるから大丈夫」と思っていませんか? 彼らにとって、2メートル程度のフェンスは助走なしで飛び越えられるハードルに過ぎません。

脱走すれば、近隣住民を巻き込んだ大事件になります。

そして、在宅ワーク中のあなたを襲うのが「遠吠え」と「破壊」です。

彼らの遠吠えは、犬の「ワンワン」という可愛らしいものではなく、数キロ先まで響く重低音です。

Web会議中に響き渡れば、仕事どころではありませんし、近隣からの通報は時間の問題でしょう。

また、留守番をさせれば、帰宅時にはソファが骨組みだけになり、ドアが食い破られている光景を目にすることになります。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「しつけでどうにかなる」という考えは今すぐ捨ててください。

なぜなら、ウルフドッグの行動は「問題行動」ではなく、彼らの「本能」そのものだからです。本能をしつけで消すことはできません。彼らを飼うということは、生活の全てを彼らに合わせ、要塞のような設備投資をする覚悟が必要なのです。

一般的な戸建て vs ウルフドッグ仕様の要塞

妻を説得できる狼。「アラスカン・クリー・カイ」という最適解

ここまで読んで、「やはり自分には無理なのか」と肩を落としているかもしれません。

ですが、諦めるのはまだ早いです。

あなたの「狼へのロマン」と「家庭の平和」を両立させる、奇跡のような解決策が存在します。

それが、「アラスカン・クリー・カイ」という犬種です。

まだ日本では馴染みが薄いかもしれませんが、この犬種こそが、ウルフドッグを諦めた(あるいは賢く避けた)愛犬家たちが辿り着く代替案にして最適解です。

アラスカン・クリー・カイは、「ミニハスキー」とも呼ばれる通り、シベリアンハスキーをそのまま小さくしたような精悍な外見を持っています。

立ち耳、巻き尾、そしてあの野性味あふれる顔つき。

見た目はまさに「小さな狼」です。

しかし、その中身は驚くほど家庭犬向きです。

体重はスタンダードサイズでも10kg程度、トイサイズなら5kg以下と、豆柴や大きめのチワワと変わりません。

性格はシャイで、飼い主家族に対して非常に忠実です。

ウルフドッグのような破壊衝動や、ハスキーのような脱走癖も比較的少ないとされています。

これなら、奥様を説得できるロジックが立ちます。

「見た目はかっこいいけど、大きさは柴犬くらいだよ」

「散歩も君がリードを持てる重さだし、家を壊される心配もないよ」

アラスカン・クリー・カイは、あなたのロマンを満たしつつ、奥様の不安も解消できる、まさに「妻を説得できる狼」なのです。

徹底比較:ウルフドッグ vs クリー・カイ vs ハスキー

では、実際にどれくらいスペックが違うのか、ウルフドッグ(F2以降)、アラスカン・クリー・カイ、そして一般的なシベリアンハスキーを比較してみましょう。

 

📊 比較表
あなたに合うのは? 3犬種の現実的スペック比較

項目 ウルフドッグ (F2以降) アラスカン・クリー・カイ シベリアンハスキー
見た目の野性味 ★★★★★ (圧倒的) ★★★★☆ (ミニ狼) ★★★★☆ (精悍)
体重 (サイズ) 30kg〜 (超大型) 4kg〜10kg (小型〜中型) 20kg〜28kg (大型)
飼育難易度 Sランク (修羅の道) Bランク (一般的) Aランク (体力勝負)
運動量 1日2時間以上の激しい運動 1日30分〜1時間程度 1日1時間以上のランニング
破壊・脱走リスク 極大 (要塞化必須) 小 (室内飼育容易) 中 (脱走癖あり)
奥様の説得度 不可能に近い 高い (可愛い・小さい) 普通 (大きさを懸念される)
法的規制 なし (F1は禁止) なし なし

 

この表を見れば一目瞭然です。

ウルフドッグとアラスカン・クリー・カイは、見た目は似ていても、飼育の実態は天と地ほどの差があります。

日本の住宅街で、家族と平和に暮らしながら「狼っぽい犬」との生活を楽しむなら、アラスカン・クリー・カイがいかにバランスの取れた選択肢であるかが分かるはずです。

本物の狼は心の中に。賢い大人は「愛せる狼」を選ぶ

「本物の狼」を飼うこと。

それは男のロマンですが、現代の日本においては、あなた自身と家族、そして何より犬自身を不幸にする可能性が高い「無謀な賭け」です。

飼えないことを認めるのは、決して「逃げ」ではありません。

それは、愛犬をコントロールできずに手放すという最悪の結末を回避し、家族を守るための「英断」です。

アラスカン・クリー・カイという選択肢は、決して妥協ではありません。

彼らは、あなたの膝の上で甘え、休日は一緒にカフェに行き、そしてそのクールな見た目で散歩中の視線を独り占めにする、最高の相棒になってくれるはずです。

「本物の狼」は心の中で飼いならし、現実には「心から愛し、守れる狼」を迎え入れる。

それこそが、真に犬を愛する、賢い大人の選択ではないでしょうか。

もし、アラスカン・クリー・カイに興味が湧いたなら、まずは信頼できる専門ブリーダー(ボブテイルシュウなど)のサイトを覗いてみてください。

きっと、あなたの新しい夢がそこから始まります。

[参考文献リスト]

ライター紹介 Writer introduction

いずもいぬ

いずもいぬ

管理人:いずもいぬ(五十代前半) 家 族:子供1人とワンコの4人家族 居住地:大阪の出身で東京生活を踏まえ、現在は山陰で田舎暮らしをしています。 犬の健康管理や躾について、愛犬のラブラドールレトリバーとの経験を交えてご紹介しているホームページになります。

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