
この記事を書いた専門家
伊藤 美咲(いとう みさき)
ドッグライフコンサルタント / 元マルプー専門ブリーダー
ブリーダーとして10年間で100組以上の家族にマルプーを送り出した経験を活かし、現在はドッグライフコンサルタントとして活動。特に、犬を初めて迎えるご家庭が最高のスタートを切れるよう、お迎え前の相談に力を入れています。「かわいい」という気持ちと「命を預かる」責任の両方に寄り添い、一組でも多くの幸せなマッチングを生み出すことが信条です。あなたの最高の決断を、誠心誠意サポートします。
こんにちは、ドッグライフコンサルタントの伊藤です。
ペットショップで出会ったマルプーの可愛さに、すっかり心を奪われてしまったのですね。
その気持ち、本当によく分かります。
私もブリーダー時代、たくさんの「一目惚れ」の瞬間に立ち会ってきましたから。
その子との暮らしを夢見る一方で、「本当に私に育てられるかな…」と不安になる、その真剣な気持ち、とても大切です。
結論から言うと、マルプーは素晴らしい家族になります。
しかし、その素晴らしい関係は、可愛いという理由だけでは乗り越えられない現実も理解してこそ築けるものです。
この記事は、「かわいい」だけで終わらせない、マルプーの成犬のリアルな姿と生涯の責任を正直にお伝えする、お迎え前の最終確認ガイドです。
この記事を読み終える頃には、あなたの不安が確信に変わり、後悔のない決断ができるようになっているはずです。
「こんなはずじゃなかった…」をなくすために。マルプーは一頭一頭が“サプライズ”
ブリーダー時代、お迎えを検討されている方から一番多く受けた質問は、「この子は、大人になったらどれくらいの大きさになりますか?」というものでした。
その質問の裏側には、「私たちの手に負える範囲の子でしょうか?」「このマンションで飼えるサイズでしょうか?」という、切実な不安が隠れていることを、私はいつも感じていました。
ここで、まずあなたに知ってほしい最も重要なことがあります。
それは、マルプーのようなミックス犬の本質は、成犬時の姿や性格に『個体差』、つまり不確実性があることです。
マルプーは、マルチーズとトイプードルの間に生まれる子ですが、両親のどちらの特徴を強く受け継ぐかは、生まれてみないと分かりません。
それはまるで、一頭一頭が“サプライズボックス”のようなもの。
毛質がマルチーズ寄りのふわふわストレートになる子もいれば、トイプードル寄りのくるくるカーリーヘアになる子もいます。
お顔立ちも、性格も、本当に千差万別です。
だからこそ、お迎えする前に「平均的なマルプー」のイメージを持つだけでなく、「どんな個性の子でも、生涯愛し抜く」という覚悟が何よりも大切になるのです。
成犬のリアル①【見た目編】:大きさ・体重・「可愛くなくなる」の真相
「個体差がある」と聞くと、かえって不安になってしまうかもしれませんね。
ご安心ください。もちろん、ある程度の目安はあります。
ここでは、具体的なデータに基づいて、成犬のマルプーの「見た目」について解説します。
マルプーの成犬時の大きさは、体重が2〜4kg、体高(地面から背中までの高さ)が20〜30cmに収まることが一般的です。
これは、両親であるマルチーズとトイプードルのサイズに大きく影響されます。
また、インターネット上などで囁かれる「成犬になると可愛くなくなる」という噂について、専門家として一言お伝えさせてください。
この噂は、正確には「子犬特有の、ぬいぐるみのような可愛さとは違う魅力に変化する」ということです。
成犬のマルプーは、落ち着きと気品が出てきて、表情も豊かになります。
それは、これから十数年を共にする家族としての、深い愛情を感じさせてくれる、かけがえのない可愛さですよ。
成犬のリアル②【性格と費用編】:甘えん坊の裏側と、生涯かかるお金の話
マルプーとの暮らしを考える上で、見た目と同じくらい重要なのが「性格」と「費用」です。
ここでは、客観的な視点で、夢と現実の両方をお伝えします。
まず性格について。マルプーはマルチーズの穏やかさと、トイプードルの賢さを受け継ぎ、非常に人懐っこく甘えん坊な子が多いです。
しかし、この「甘えん坊」という長所は、適切なしつけをしないと「分離不安(飼い主と離れると極度に不安になる状態)」という課題に繋がりやすい、表裏一体の特性でもあります。
賢いがゆえに、寂しさからくる要求吠えを覚えてしまうことも少なくありません。
お迎えしたその日から、一貫した態度で「一人でも落ち着いて待てる」トレーニングをすることが、お互いの幸せのために不可欠です。
次に、生涯かかるお金の話です。
これは、お迎え前に必ずシミュレーションしていただきたい、最も現実的な課題です。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: お迎え後に「こんなはずじゃなかった」と後悔する原因の第1位は、トリミング代や医療費といった「想定外の継続的な出費」です。
なぜなら、多くの人がフード代やグッズ代は計算に入れても、毎月必ずかかるトリミング費用や、万が一の病気に備えるペット保険料、医療費を見落としがちだからです。この費用を捻出し続けられるかどうかが、マルプーを生涯幸せにできるかどうかの大きな分かれ道になります。
📊 比較表
マルプーと暮らすための生涯費用シミュレーション(目安)
| 費用の種類 | 金額(目安) | 備考 |
|---|---|---|
| 【初期費用】 | ||
| お迎え費用 | 200,000円~500,000円 |
時期やブリーダーによって変動します。 |
| グッズ代 | 約50,000円 |
ケージ、トイレ、食器、ベッドなど。 |
| 【年間費用】 | ||
| フード・おやつ代 | 約60,000円 |
|
| トリミング代 | 約96,000円 |
月1回 8,000円で計算。マルプーには必須です。 |
| 医療費・保険料 | 約60,000円 |
年齢と共に増加する傾向があります。 |
| その他(消耗品など) | 約30,000円 |
トイレシート、おもちゃなど。 |
| 年間合計 | 約246,000円 |
この表を見て、どう感じましたか?マルプーの美しい被毛を健康に保つためには、定期的なトリミングが絶対に不可欠であり、それが生涯続く固定費となることを、どうか心に留めておいてください。
【最終確認】私たちの家で、本当に幸せにしてあげられる?
さて、ここまでマルプーの成犬のリアルな姿を様々な角度からお伝えしてきました。
最後のステップとして、これまでの情報を基に、あなたご自身の状況に当てはめて考えるための「最終確認チェックリスト」をご用意しました。
YESかNOで、正直に答えてみてください。
【お迎え前 最終確認チェックリスト】
- [時間] 毎日15分以上のブラッシング時間を、これから十数年間、確保できますか?
- [お金] 月々1万円前後のトリミング代と、年間数万円の医療費を、家計に無理なく捻出し続けられますか?
- [しつけ] 賢いからこそ難しい要求吠えや分離不安のトレーニングに、根気強く向き合う覚悟はありますか?
- [健康] マルプーが遺伝的にかかりやすい膝蓋骨脱臼のリスクを理解し、滑らない床材を敷くなどの予防策を講じられますか?(万が一の手術には高額な費用がかかります)
- [覚悟] もし、想像していた見た目(毛質、顔立ち)とは少し違う子に成長しても、その子の個性を生涯愛し続けると誓えますか?
この質問に、ご夫婦そろって笑顔で「YES」と答えられたなら、あなたたちはマルプーを生涯幸せにできる、素晴らしい飼い主になれるはずです。
まとめ:あなたの真剣な悩みが、最高のスタートになる
マルプーとの暮らしは、あなたの人生に、計り知れないほどの喜びと癒やしを与えてくれます。その事実は間違いありません。
しかし、その大きな喜びは、ミックス犬特有の個体差を受け入れ、生涯にわたるケアとお金の責任を負うという、真剣な覚悟の上になりたつものです。
ここまで真剣に調べ、悩んだあなたなら、きっと後悔のない決断ができます。
お迎えするという道を選んでも、今回は見送るという道を選んでも、そのどちらもが、あなたと未来の愛犬にとっての誠実で正しい選択です。
最終的な決断を下す前に、この記事のチェックリストを持って、もう一度ご家族(パートナー)とじっくり話し合ってみてください。
そして、もしお迎えする決心がついたなら、必ず両親犬に会わせてくれる、信頼できるブリーダーやペットショップを選ぶことを心からお勧めします。
あなたの新しい家族との出会いが、最高に幸せなものでありますように。
[参考文献リスト]
この記事を作成するにあたり、以下の信頼できる情報源を参考にしました。
- マルプーの成犬はどれくらいの大きさ?子犬との違いや飼い方のポイントも解説! – みんなのブリーダー: https://min-breeder.com/column/dog/malpoo-seiken-ookisa.html
- 【獣医師監修】マルプーの性格や特徴、値段、飼い方について – PETOKOTO: https://petokoto.com/articles/187
- マルプーってどのくらいの大きさ?成犬の平均体重や体重管理のコツ、かかりやすい病気について解説 – 犬の家&猫の里: https://dognoie.com/blog/dog-picture-book/0rpqxxcit6bp/
ライター紹介 Writer introduction
いずもいぬ
管理人:いずもいぬ(五十代前半) 家 族:子供1人とワンコの4人家族 居住地:大阪の出身で東京生活を踏まえ、現在は山陰で田舎暮らしをしています。 犬の健康管理や躾について、愛犬のラブラドールレトリバーとの経験を交えてご紹介しているホームページになります。
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