【獣医師が解説】犬が吐く白い泡は大丈夫?3分でわかる緊急度チェックと対処法

【獣医師が解説】犬が吐く白い泡は大丈夫?3分でわかる緊急度チェックと対処法

執筆者プロフィール

さわぐち まさる
救急救命科 担当獣医師
この記事を書いた専門家
夜間救急動物病院で10年間、年間2,000件以上の救急症例に対応。数多くの命の危機を救ってきた経験から、飼い主さんがパニックにならず、動物のために最善の行動をとるための情報発信を続けている。

 

愛犬が突然、白いネバネバした泡を吐いたら、本当に怖いですよね。

どうしていいか分からず、パニックになる気持ち、痛いほどわかります。

まず、落ち着いてください。

その嘔吐は、今すぐ命に関わるものではない可能性が高いです。

この記事では、救急獣医師である私が、パニック状態のあなたでも3分で「病院へ行くべきか」を判断できる緊急度チェックリストを用意しました。

この記事を読めば、冷静さを取り戻し、今すぐ本当にやるべきことだけが分かります。

まずは深呼吸。その白い泡の正体は「胃液」かもしれません

大丈夫ですか、落ち着いてください。

今あなたのワンちゃんが吐いて、とても怖い思いをしていますよね。

わかります。

夜間救急の電話口で、「うちの子、死んじゃうんじゃないか」と震える声で話される飼い主さんを、私は何千人と見てきました。

まず知ってほしいのは、犬は私たち人間よりもずっと吐きやすい動物だということです。

そして、犬が吐く白いネバネバした泡の嘔吐の多くは、空腹によって逆流した胃液が原因です。

お腹が空っぽの時間が長くなると、胃酸が出すぎて胃を刺激し、その胃液を吐き出してしまうのです。

これは犬によくある生理現象の一つで、特に朝方や食事の前に見られることが多いです。

もちろん、全ての嘔吐が安全なわけではありません。

しかし、「白い泡を吐いた=重篤な病気」とすぐに結びつける必要はないのです。

まずはあなたが深呼吸をして、冷静に愛犬の様子を観察することが、何よりも大切な第一歩です。

命の分かれ道。今すぐやるべき「3分間 緊急度チェックリスト」

ここからが本番です。

嘔吐という症状と、愛犬の緊急性との関係性は、他の症状とセットで判断することが極めて重要です。

これから私がする5つの質問に、「YES」か「NO」で答えてください。

あなたのワンちゃんの命を守るための、大切な3分間です。


【緊急度チェックリスト】

  1. 吐いた後、ぐったりして元気がないですか? (呼んでも反応が薄い、起き上がらないなど)
  2. 嘔吐を1日に何度も繰り返していますか? (3回以上が目安)
  3. 下痢、震え、多量のよだれ、呼吸が荒いなど、他の症状がありますか?
  4. お腹がパンパンに張っていませんか? (触ると嫌がる、苦しそうにしているなど)
  5. おもちゃの破片やヒモ、薬など、何かを誤飲した可能性はありますか?

嘔吐の緊急度

診断はできましたか?

  • 5つの質問のうち、1つでも「YES」があった場合
    緊急性が高い可能性があります。すぐに動物病院へ連絡してください。
  • 5つの質問がすべて「NO」だった場合
    緊急性は低い可能性が高いです。落ち着いて、次の「チェック後の具体的なアクションプラン」に進んでください。

チェック後の具体的なアクションプラン【獣医師からの指示】

チェックリストの結果に基づき、あなたが今すぐ取るべき具体的な行動を指示します。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 自己判断で人間用の胃薬や吐き気止めを絶対に与えないでください。

なぜなら、この点は多くの人が見落としがちで、良かれと思ってしたことが、犬にとっては中毒を引き起こし、命に関わる事態を招くことがあるからです。救急現場では、こうした自己流の処置による症状の悪化が後を絶ちません。薬は必ず、獣医師の診断と処方に従って使用してください。

📊 比較表
緊急度チェック後のアクションプラン

状況 青信号 の場合(すべてNO) 🚨 赤信号 の場合(YESが1つでも)
今すぐやること ①絶食・絶水: 最低4〜6時間は水もフードも与えず、胃を休ませる。 ①動物病院へ電話: まずは電話で状況を伝え、指示を仰ぐ。
次にやること ②少量ずつ給水: 時間が経ったら、スプーン1杯程度の水を少しずつ与えてみる。 ②病院へ行く準備: 吐瀉物(写真でも可)、飲んだ薬や食べた物の残りなどを持参する。
観察のポイント 水を飲んでも吐かなければ、ふやかしたフードを少量与えてみる。 ③情報を整理: いつから、何を、何回吐いたか、他の症状はないかをメモしておく。
注意点(NG行動) 心配でフードやおやつをすぐに与える。 パニックのまま、連絡せずに病院へ駆け込む。

動物病院(獣医師)と飼い主(あなた)との連携は、正確な診断に不可欠です。

病院へ行く際は、あなたの観察した客観的な情報が、何よりの診断材料になります。

よくある質問:白い泡の嘔吐に関するその他の疑問

Q1. ストレスが原因で、白い泡を吐くこともありますか?

A1. はい、あります。環境の変化(引っ越し、ペットホテルなど)や、長時間の留守番など、強いストレスが引き金となって胃の動きが乱れ、胃液を吐いてしまうことがあります。原因となるストレスを取り除いてあげることも大切です。

Q2. ドッグフードが合わなくて吐くことはありますか?

A2. 可能性はあります。急にフードを切り替えたり、脂質の多いフードを与えたりすると、消化器が対応できずに吐いてしまうことがあります。フードを切り替える際は、1週間以上かけて少しずつ新しいフードの割合を増やしていくのが基本です。


まとめ:不安は自信へ。世界に一頭の愛犬との未来を楽しもう

愛犬が吐いた時、一番大切なのは、飼い主であるあなたが冷静になることです。

  1. まず深呼吸し、過度に怖がらないこと。
  2. 緊急度チェックリストを使い、客観的に状況を判断すること。
  3. チェック結果に基づき、正しい対処法を実践すること。

あなたはもう一人ではありません。

この記事で得た正しい知識が、あなたと、あなたの愛するワンちゃんを救います。

もし少しでも不安が残るなら、絶対に一人で抱え込まず、迷わずかかりつけの動物病院に電話してください。

その一本の電話が、最悪の事態を防ぐ最も確実な方法です。

 


参考文献リスト

  • アニコム損害保険株式会社 「アニコム家庭どうぶつ白書2023」
  • 公益社団法人 日本獣医師会 「診療におけるインフォームド・コンセントのガイドライン」

ライター紹介 Writer introduction

いずもいぬ

いずもいぬ

管理人:いずもいぬ(五十代前半) 家 族:子供1人とワンコの4人家族 居住地:大阪の出身で東京生活を踏まえ、現在は山陰で田舎暮らしをしています。 犬の健康管理や躾について、愛犬のラブラドールレトリバーとの経験を交えてご紹介しているホームページになります。

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