
はじめまして、獣医師の吉田です。
愛犬のおしっこに血が混じっていたら、心臓が止まるような気持ちになりますよね。
大丈夫、まずは深呼吸しましょう。
今あなたがパニックになるお気持ちは、痛いほど分かります。
愛犬のおしっこに血が…!本当に心配ですよね。
どうしていいか分からず、心臓がドキドキしているかもしれません。
大丈夫、まずは落ち着いてください。
結論からお伝えします。犬の血尿は、元気に見えても決して様子見をしてはいけないサインです。
この記事では、夜間救急に詳しい獣医師が、「今すぐ病院に行くべきか、朝まで待てるか」を3分で判断できる緊急チェックリストと、飼い主さんが今すぐやるべきことを、私が隣にいるような気持ちで、一つずつ丁寧にお伝えします。
読み終える頃には、あなたの不安は「何をすべきか」という冷静な行動計画に変わっているはずです。
[著者情報]
この記事の著者
吉田 沙也加 (よしだ さやか)
獣医師 / よしだ動物病院 院長都内の夜間救急動物病院で5年間、数多くの緊急症例を経験。「飼い主さんの不安に寄り添う診療」をモットーに、現在は地域のかかりつけ医として、特に初心者オーナー向けの丁寧な説明に定評がある。
「元気そうに見える」が一番危険。犬が不調を隠す理由
夜間の電話相談で、私が一番多く聞いてきた言葉があります。
それは、震える声で訴える「血尿なんですけど、でも、元気なんです…」という言葉です。
その言葉の裏にある「どうか『大丈夫だ』と言ってください」という飼い主さんの切実な祈りを、私は痛いほど理解しています。
しかし、獣医師として、私ははっきりとお伝えしなければなりません。
犬の「元気そう」は、全くあてになりません。
犬は元来、群れで暮らす動物でした。
群れの中で弱みを見せることは、外敵に狙われる危険や、群れから置いていかれることを意味します。
その本能が、現代の家庭犬にも色濃く残っているのです。
彼らは、痛みや不快感をギリギリまで我慢し、飼い主さんの前では健気に「いつも通り」を装います。
ですから、血尿という明らかな異常サインが出ているのに「元気そうだから」と様子を見てしまうことが、飼い主さんが犯しうる最も危険な間違いなのです。
あなたの「あれ、おかしいな?」という観察力と心配こそが、言葉を話せない愛犬を救うための、何より大切な第一歩なのです。
【緊急判断フローチャート】1分で判定!夜間救急?かかりつけ医?
パニック状態の今、あなたに必要なのは、たくさんの情報ではなく、YES/NOで答えられるシンプルな道しるべです。このフローチャートを使って、愛犬の状態を冷静に確認してください。

このフローチャートが示す通り、犬の『尿道閉塞』は、命に関わる最高レベルの『緊急性』を持つ状態であり、即座に『夜間救急動物病院』へ行くべき絶対的な理由となります。
おしっこが出ない状態が数時間続くと、急性腎不全や尿毒症を引き起こし、命を落とす危険があるからです。
病院に行く前に!飼い主さんが今すぐやるべき3つの準備
フローチャートで「明日の朝一番でかかりつけ医へ」と判断された場合も、安心して眠れるわけではありませんよね。
獣医師への正確な診断に繋がる、今からできる3つの準備を始めましょう。
- 落ち着いて観察・記録する
スマホのメモ機能で十分です。以下の点を記録しておきましょう。- いつから?: 今日の夜9時に初めて気づいた、など。
- 血尿の色は?: 真っ赤、ピンク色、オレンジ色、茶色っぽい、など。
- おしっこの回数は?: 何度もトイレに行くが少ししか出ない、など。
- 他に変わったことは?: 陰部をしきりに舐めている、水を飲む量が増えた、など。
- できる範囲で尿を採取する
新鮮な尿は、診断のための最も重要な情報源です。難しい場合は無理しなくて大丈夫ですが、もしできそうなら試してみてください。
- 動物病院へ電話する
明日行く予定のかかりつけの病院へ、留守番電話にメッセージを残しておくか、朝一番で電話しましょう。血尿の症状を伝え、何時頃に行くべきか、事前に絶食などが必要かなどを確認します。
✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス
【結論】: 獣医師に電話で相談する際は、「元気なんですけど…」ではなく、「血尿が出ています。おしっこは出ています」と事実だけをまず伝えてください。
なぜなら、緊急時において獣医師が最も知りたいのは「元気かどうか」という飼い主さんの主観よりも、「尿が出ているか、出ていないか」という客観的な事実だからです。この事実が、電話口での緊急度判断の精度を大きく左右します。この知見が、あなたの愛犬を救う助けになれば幸いです。
犬の血尿で考えられる主な病気(※獣医師の診断が必要です)
なぜこんなにも病院受診を急かすのか、不安に思うかもしれません。
それは、血尿の裏には、早期治療が必要な病気が隠れていることが多いからです。
代表的なものとして、細菌感染による『膀胱炎』や、尿路に石ができてしまう『尿石症』があります。
これらの病気は、確定診断のために病院での『検尿』が不可欠です。
尿検査によって、細菌の有無や結石の種類を特定し、それぞれに合った正しい治療(抗生剤や食事療法など)を開始することができます。
インターネットで病名を検索して自己判断するのではなく、実際の尿を獣医師に見せることが、愛犬を苦痛から救うための最短ルートなのです。
まとめ:あなたの冷静な行動が、愛犬の命を守ります
愛犬の血尿というショッキングな出来事に、あなたは今、必死で立ち向かっています。
その行動は、決して間違いではありません。
- 犬の血尿は、元気そうに見えても必ず動物病院へ。
- 特におしっこが全く出ていない場合は、命に関わる緊急サインです。
- あなたの冷静な判断と迅速な行動が、愛犬の未来を守ります。あなたは一人ではありません。
今すぐ、この記事のフローチャートで愛犬の状態をもう一度確認してください。
そして、その結果に従って、夜間救急病院か、かかりつけの病院に電話をしましょう。
あなたの声が、愛犬を救う力になります。
[参考文献リスト]
ライター紹介 Writer introduction
いずもいぬ
管理人:いずもいぬ(五十代前半) 家 族:子供1人とワンコの4人家族 居住地:大阪の出身で東京生活を踏まえ、現在は山陰で田舎暮らしをしています。 犬の健康管理や躾について、愛犬のラブラドールレトリバーとの経験を交えてご紹介しているホームページになります。
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